5月5日、三春町中心市街地において初めての開催となる「三春春まつり」が開催されました。
平成23年より立ち上がった実行委員会をはじめ、三春町の皆さん、仮設住宅のある富雄課長と葛尾村の皆さんのご協力を頂きながら準備を進めました。
「三春春まつり」メインとなった時代行列は町にゆかりのある坂上田村麻呂公行列と田村清顕公、相馬義胤公、伊達政宗公行列の2つから成り立ちます。
当日は参加者総合計250名、馬15頭による全長150メートルにもなる勇壮な時代行列は大将を中心に、重臣、槍隊や鉄砲隊、武者、薙刀隊などが隊列を組み、事前に練習した所作を披露しながら約1キロのコースを進みました。
また、田村勢、相馬勢、伊達勢に分かれての「風雲 三春城下の戦い」と題した合戦演舞も披露され、槍や鉄砲、薙刀を持った参加者の皆さんによる演舞に大きな歓声があがっていました。
復興への祈りを形にする
井筒企画では、東日本大震災復興記念事業として、三春町を代表する武将:田村清顕と、三春をめぐる争いに最も関係深い2大武将を交えての戦国武者行列を提案し、彼らの武者としての勇猛さ、粘り強さ、苦難に立ち向かう力強さを表現し、復興への強い祈りの体現の場として、そして東北の人々に勇気を与えるイベントとなるよう心掛け、隊列の提案をさせていただきました。
ルートの確保
三春町にて時代行列を開催するのは初めての事。地図を片手に行列ができるルートを探しました。
また、同時に着付けをする場所、開会式の会場、行列の待機場所、馬の待機場所、参加者の休憩場所や車の待機場所等、行列がルートを円滑に進むための待機場所の確保も必要です。音響設備の設置場所などや舞台の設置場所なども確保しないと行列が出発したことや近くまで来ていることが町中に伝わりません。
幸いなことに、三春町には役場の前が大きな道があり、着付け場所になりそうなホール、馬の待機場所に使えそうな大きな駐車場、開会式に使えそうな小学校などが隣接していることもあり、行列のルートを考える上で必要な要素が集まっていました。
出陣式の会場設定、着付け会場の設定、マスコミの対応などの担当も明確にする必要があります。安全管理の上で、消防管理、警備なども必要となります。当日車で集まると駐車場の確保が必要になるので役場の駐車場周辺の管理や対応、受付案内などにつく役割の人員確保と配置も必要です。
担当者の名前を明確にすると同時にそれぞれの一日の流れがわかるように当日のスケジュール表を作成し、進行するにあたってスタッフ全員の動きを把握できるようにしました。
行列所作、合戦演舞の振り付け〜復興の思いをテーマ曲に〜
三春町、富岡町と葛尾村の皆さん、被災された方々は私達の想像を絶する戦いをなさっているのだと思います。
被災された方々が、ひと時でも笑顔になれる時間が持てれば、お祭りの為に振付を覚えるという目の前のことに集中して、ひと時でも日々の生活を忘れる瞬間をつくれればという思いを持って、振付とテーマ曲をつくりました。
また、基本の振り付けを繰り返すという簡単な振りにし、リズムをのみを変え見た目に違いをつける振りにして練習回数が少なくても参加される皆さんに覚えて頂けるよう心掛け振付けをつくりました。
侍女の列は女性らしさを大切にした歩き方・振りを重視し、女性でも女武者になると薙刀を持つので勇壮な姿になるように、また、武者は刀を振り上げ勇ましい姿になるよう、槍・鉄砲隊もそれぞれの隊列の武器を使った振付けをつくりました。
参加者募集
隊列の内容が決まると募集をかける人数が決まります。
隊列ごとに男性、女性の数を割り出し、それぞれどのような役柄かと、どのような衣裳を着るのかを紹介し、参加者の募集が始まりました。
お友達に声を掛けて数名で参加される方や、会社の同僚に誘われて来ました・・と不安そうにされている方等、参加方法は様々ですが、久しぶりに三春に戻ってお祭りに参加することを楽しみにされている姿はとても頼もしい姿でした。
参加者揃っての練習≪各隊列ごとの所作・合戦演舞・太鼓のリズム・着付≫
行列に参加する皆さんが一斉に集まる初めての練習会がはじまりました。
隊列ごとの振りは2パターンあります。歩き進みながらテーマ曲に合わせて踊りを披露するのが行列演舞、合戦シーンを入れ込み臨場感たっぷりのシーンを披露するのが合戦演舞です。
最初は戸惑っていらっしゃる姿がありましたが、練習が始まるとすぐに皆さん集中して、積極的に覚えようとしてくださる姿に変わりました。
隊列ごとにまずはリズムを覚えてもらうことを前提にテーマ曲「風雲 三春城下の戦い」のリズムに合わせて歩く練習から始まりました。武者は大股で歩き隊列全体が大きく見えるように、女性は清楚に歩く事を心がけてもらい、練習は続きます。
合戦シーンの演技は隊列ごとの振り付けと、諸大名を筆頭にする田村勢・相馬勢・伊達勢にわかれる振り付けと2つ考えました。隊列ごとの振り付けはそれぞれの武器の役割が分かりやすいような振り付けを、また、合戦シーンでは武者達が刃を交えて戦うような演技です。
参加者みなさんそれぞれが担当する隊列の振り付け、前にでるタイミングや引くタイミング、待機の姿勢など一生懸命覚えようとする姿がありました。
最終全体練習
1回目の全体練習は振り付けのパターンを覚える事に専念して時間が過ぎましたが、本番前日にもなると違った緊張感がありました。まずはテーマ曲を全員で歌って意識を高め、会場全体の気持ちが揃ったところで行列所作の復習から入りました。
太鼓のリズムを奏でる太鼓奏者の方たちも前回の練習会から何回も練習を重ねて来て下さっていたので、数回練習したらすぐに感覚が戻ってきていた様子が伺えました。
行列の参加者の皆さんには隊列ごとの並ぶ順番が出来ていたので隊列ごとに歩く順番に並んでもらい、前後の方の顔を改めて覚えてから練習がはじまりました。
明日が本番という事もあり、先生の指導にも熱が入り、皆さんの顔つきも本番さながら様子に変わっていました。
前日の練習会の様子を撮影しようと報道の方々が来られる事になったので、行列の所作の練習会と当時に着付け練習会が行われていた着付けの会場よりモデル役になった衣裳を着た方たちが振り付けの練習会会場に激励に来られ、参加者の皆さんは明日自分たちが着る衣裳を改めて実際に目で確認し、触って重さなども確認する姿がありました。
また、各会場では設営準備を進めました。出陣式用の舞台、音響テントの設置、合戦演舞の会場では観客席・音響設備の設置、行列ルートでは設置したマイクの確認、着付け会場では参加者分の衣裳の準備や受付の準備など、それぞれ担当するスタッフが分かれて準備をしました。
着付け会場では250名分ほどの衣裳を並べるに当たり、1着1着に通し番号と名前を貼り、参加者皆さんが当日着ていただく衣裳が分かるように心がけました。
本 番
外でのお祭り開催には天候の確認は必要です。三春春まつりの場合は朝5時30分の時点の天候で開催するかどうかが決まるようになっていました。(お陰様で5日は晴天に恵まれ、汗ばむ陽気になりました。) 開催が決定となるとあとは昨日進めた準備にならって参加者や見物のお客さんを迎えるのみ!
着付け会場では担当を決めて練習をした衣裳の着付けを進めます。参加者の皆さんも衣裳に袖を通すとますます本が近づいている気持ちになるのか、気合が入っていくのが分かりました。
衣裳を着たら、出陣式の会場・三春小学校の校庭へ歩いて移動しました。実行委員長や三春町長の挨拶の後に、参加者全員で勝鬨をあげ、行列は出発しました。
行列の先導には三春町舞踊団体の皆さん約150名による踊りが披露され、行列に花を添えてくださいました。
行列は大将を中心に重臣、槍隊や鉄砲隊、薙刀隊が隊列を組んで進み、役場前から出発し約1キロのコースを練り歩きました。また、合戦演舞では田村勢、相馬勢、伊達勢に分かれての合戦演舞も披露され、鉄砲や槍、薙刀をもった参加者皆さんによる演舞に大きな声援が上がっていました。合戦演舞の最後には三町村が復興に向けて手を携えることを誓い、勝鬨をあげました。その後、葛尾村に伝わる三匹獅子や震災後初めて富岡町の御神楽など披露され、ひときわ大きな声援があがっていました。
お着付けをしながら、手直しをしながらたくさんの方とお話ししました。参加者のなかにはまだ県内外にバラバラに避難していらっしゃる方が多数おられました。
お祭りに参加することが決まり、久しぶりに三春に帰り、よく知った友達や近所の方たちその久しぶりの再会を楽しみにもしていたし、何よりもみんなと笑顔でお祭りの事について話が出来て本当によかった、いつか必ず戻るという気持ちが一層強くなったと皆さんおっっしゃっていました。
この三春春まつりを開催するに当たり、参加者の皆さんは「興(おこす)」と刺繍されたお守りを身に着け参加されました。参加者、スタッフ全員が復興の祈りと誓いをみんなで確認しあうそんな春まつりにしたいと強い思いを持って欲しい、と井筒企画より提案し制作いたしました。
さまざまな苦難を切り開いて三春の繁栄を築いた先人の姿を春まつりで伝えることで三春の未来を築く指針となるようにしたい、まつりを軸に地域の絆をより一層深めてほしいという井筒企画の思いと復興への願いを込めた三町村の方々の思いが今後も継続して続いていきますように。