平成22年(2010)は、我が国で初めての本格的な首都『平城京』が誕生してから1300年にあたります。
これを記念して、平成22年1月1日から12月31日までの一年間、平城京誕生の地である奈良県奈良市を中心として平城遷都1300年祭が開催されました。
この100年に一度の大事業の一端を井筒企画でお手伝いさせていただきましたので、その様子をご紹介いたします。
奈良時代に宮中で行われていた儀礼や行事、華やかに繰り広げられていた芸能などを現代でも楽しんでいただけるように創作を加えて再現されました。
再現にあたっての総合監修は、京都女子大学 瀧浪貞子教授により行われました。
相撲節会(すまいのせちえ)
相撲節会は、毎年7月7日に行われた宮中行事であり、全国各地から相撲人(力士)を招集し、その取り組みを天皇が観覧するという、宮中での最大行事の一つ。
『続日本紀』には、天平六(734)年7月7日に聖武天皇が宮中で相撲を観覧されたという記載があります。
この行事を京都市美術館 村井康彦館長の監修のもとエンターテインメント性を高めた物語として再現されました。
浪曲師の国本武春さんが語り部を務め、映像も駆使しながら奈良が発祥の地とされる相撲の起源や、天覧相撲の節会の様子を親しみやすい姿で紹介。
特設された第一次大極殿前のステージでは、たくさんの来場者が見守る中、官人や相撲人が入場。右方、左方の2陣営に分かれて取り組みが行われ、童が行う占手相撲をはじめに最強の力士である最手(ほて)まで、5番の取り組みが行われ、それぞれの決まり手を解説しながら紹介されました。
開催場所 | :第一次大極殿前特設ステージ |
開催日 | :10月10日 |
出演 | :奈良県相撲連盟、天理大学雅楽部 |
射礼(じゃらい)
「射礼」は歩射であり、奈良時代最も重要とされていた儀式の一つ。
宮廷官人の礼的秩序を定める一環として始められ、奈良時代の基本法である『養老令』に定められるように、毎年1月17日に行われるこの行事には全官人が参加して行われました。
また時には来朝時の外国使節が自らの国の弓を用いて参加したといいます。
『続日本紀』には、天平十二(740)年正月17日、聖武天皇が大極殿南門に出御され射礼を観覧したとあり、これに倣った形で第二次大極殿南門基壇を特設会場として、「射礼」が再現されました。
当日、会場東側の宮内省復原建物を出発した射手一行は衛士隊の先導により会場に到着。
弓馬術礼法小笠原教場三十一世小笠原清忠宗家の蟇目式から始まった射礼儀式は、小笠原教場同門が扮した射手12名により古式に則り、整然と執行されました。
色鮮やかな古代衣装を纏った射手が次々と的を射る様子は圧巻でした。
開催場所 | : 第二次大極殿南門基壇特設会場 |
開催日 | :10月24日 |
出演 | :弓馬術礼法小笠原教場、天理大学雅楽部 |
騎射(うまゆみ)
奈良時代の半ばに全官人が参加する国家儀礼として確立され、毎年5月5日に行われていた騎射は射礼と並び、当時最大の宮中行事でした。
疾駆する馬上から矢を放ち、的を射る姿は、流鏑馬の源流ともいわれます。当時は平城宮内もしくは朱雀門前などに設けられた馬場で行われていたとの記録が見られます。
今回は第一次朝堂院西堂前に北から南に駆ける250mの馬場を特設。正面に朱雀門、背景に大極殿が控えた馬場で行われた様子は壮麗でした。
行事開始に先立ち、飾馬を先導に行列を整えての行進入場がありました。飾馬着装の唐鞍は、騎射にゆかりの京都賀茂御祖神社から特別に借用されたもの。
馬場入りの後、太鼓の音とともに騎射が開始され、古代衣装に身を包んだ弓馬術礼法小笠原教場の方々が馬場を駆け抜け、80m間隔で3カ所に設けた直径一尺五寸(約45cm)の円形の的を見事射抜くと、見守っていた多くの観覧者から歓声が上がっていました。
開催場所 | :平城宮跡中央区朝堂院西堂前特設馬場 |
開催日 | :10月31日 |
出演 | :弓馬術礼法小笠原教場 |
衛士隊の再現(えじたいのさいげん)
衛士は、宮門や平城京内の警備を担当した兵士。平城京には衛門府、衛士府などおよそ1,600人の衛士がいたとされています。
衛士隊の服装は「養老衣服令」に基づき再現。衛士は、黒色の衣に挂甲(けいこう)というよろいを着けます。衛士挂甲は、宮崎隆旨奈良県立万葉文化館参与の監修のもとに再現。奈良時代挂甲の再現は今回が初めてのことです。
平城宮跡会場の開場、閉場時間に合わせ朱雀門開門・閉門のパフォーマンスを行い、お昼には南門前において、衛士配備交代のアトラクションを行いました。
当時、開・閉門が太鼓の音を合図に行われたことに倣い、太鼓隊列を加えています。
また、各アトラクションに合わせ、場内を隊列行進し、宮内警護の様子も併せ再現するなど、創作を加えた古代のアトラクションとして実施しました。
開催場所 | :平城宮朱雀門、第一次大極殿院南門 |
開催日 | :4月24日から11月6日 |
曲水の宴
古代中国で3月3日に水辺で行われていた祓いの行事が宴遊化し、水辺に臨んで行われる詠詩を伴う風雅な宴として日本に伝わったものといわれます。
奈良時代には天皇がお出ましになり、五位以上の貴族が酒を飲んだり、詩を詠じたりしたといいます。
奈良時代の庭園が復原された平城宮跡東院庭園で再現された曲水の宴では、園池および中央の建物を用いての詩宴が行われました。
天皇の召しにより宴に参加する貴族は、華やかな古代衣装を着し登場。当時は女性の参加はありませんが、華やかな宴を演出するために、男性貴族と同じく五位以上の装束を纏い登場しました。
宴には歌人のお世話をする白丁がいますが、今回は黄衣を着した可愛らしい子供たちが扮しています。
また、宴に華を添える雅楽・舞楽が、天理大学雅楽部により披露されました。
詩は歌題にふさわしいものが奈良時代の漢詩集「懐風藻」から選ばれました。
また披講にあたっては、当時も講師により披露されたことに倣い、歌詠人が登場し行われました。
開催場所 | :東院庭園 |
開催日 | :10月9日、11日、16日、17日、23日、11月3日(6日間実施) |
出演 | :天理大学雅楽部 |
平成散楽
奈良時代に大陸から日本に伝わった散楽。
能のルーツとも云われていますが、当時は軽業や曲芸踊りなども行われたようです。
こうしたことにちなみ、日替わりで、2・3組のパフォーマーが古代風の衣装を纏い、南門広場で大道芸などのパフォーマンスを披露しました。
開催場所 | :第一次大極殿院南門前広場 |
開催日 | :10月9日から11月6日 |
平城宮跡会場にて歴史文化を体験・楽習
古代からの国際文化交流にも焦点を当てた、参加体験することのできる様々な展示・体験施設、催事が展開されました。
天平衣装体験
簡単に洋服の上からでも着ていただけるように工夫をし、また幼児サイズから大人サイズまでの各種サイズを取り揃え、様々なグループに参加いただけるように致しました。
平城京なりきり体験館では、平城京のVR映像を背景に、まるで奈良時代にタイムスリップしたかのような記念写真を撮影できました。
また、天平衣装貸し出し所の衣装体験では、建物の中を飛び出し、復原された第一次大極殿内まで散策体験。平城京の建物に囲まれ、気分は一気に平城京の貴族です。